国家が企業の株式を保有することの意味


この日本政府の日本企業株式保有額が多いか少ないかは各個人の主観による。しかし東証一部上場企業の加重平均配当利回りは2.23%であり年約2.23兆円が配当金を通して、一般政府収入となる。
法人実効税率約29.74%、法人税収が10.8兆円(2019年度)である日本においこの2.23兆円は法人実効税率を約6.14%上昇させた額と等しい。
安倍政権が始まってからGPIFの保有日本株が17兆円から45兆円に、日銀ETF保有額が1兆円から45兆円に、合わせて72兆円増加している。
つまり、法人実効税率を4.42%増加させるのと同じ分、一般政府の収入が増大したことに等しい。
安倍政権は、法人実効税率35.47%%から 29.74%に5.73%分減少させた。
しかし、国家による株式買い入れにより、法人税率を4.42%増加させたのと同じ分収入を増加させている。
以上の事実を踏まえれば、安倍政権下に行われた、一連の法人税引き下げ策は、実質的には、法人税率を1.31%減少させたに過ぎす、これが原因として格差拡大を推進するとは考えられない。事実、所得面の格差拡大を示すデータは存在しない。
勿論、GPIFの株式比率増大と日銀のETF購入は、安倍政権が格差拡大を防止することを目的に実行したわけでもなければ、国家資本主義や社会主義化を目的としたわけでもない。
ただ、支持率獲得のために株高を指向したことやGPIF自身の収益率拡大策、日銀の金融緩和策の方向性が一致し、大規模な政策として実行されただけである。

しかしこの結果には、強く刮目する必要がある。
政府が日本企業の株式を直接又は間接的に保有することは、実質的には、日本政府による企業の国有化が進行していることを意味する。
現代資本主義国家において、これ程大規模な国有化がなされたことは二次大戦時を除いて存在しない。
筆者はこれを日本型国家資本主義体制構築への第一歩であり、歓迎するべきことだと考える。
過去数十年にわたって、全世界的に法人税率の引き下げ競争が続いてきた(図2参照

図2

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また、タックスヘイブンの繁栄も著しい。このため、国民国家の徴税力が侵食されつつある。

日本は、現状法人税率が諸外国と比べ、高く(図3参照)、法人税率の引き下げは好ましくいない。国際競争力を鑑みれば、さらに引き下げるべき状況にある。

然れども、更なる引き下げは、長期的な視点では国民国家の破壊につながりかねないし、再分配システムを破壊し格差拡大に繋がりかねな い。

 

だからこそ、新しい徴税権の一形態として、日本政府による上場日本企業の株式保有があると考える。事実、上記に示した様に安倍政権による一連の日本政府による日本企業株式購入は、配当金を通して、再分配に繋がっている。

図3

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